[-K+SO]
[-K+SO]という名の通り,キッチンを共用部に設け,代わりにSmall Officeを各住戸に配することで,アントレプレナーが全ての情熱を仕事に注ぐ職住一体の活動拠点を提案した.
縦動線のコアを集約化することで専有部分の面積を最大化し,最新セキュリティによって部外者の立ち入りを制限する――果たしてこのイデオロギーは,現代における職住一体型の集合住宅に適合しているだろうか.企業勤めの夫が会社から帰宅し,自宅で妻や子供と家族団欒を楽しむ,かつての団地社会の姿から,働き方も住まい方も随分と変化してきたが,賃貸住宅の設計概念は旧態依然としている.そこで本提案では,住まい手としてアントレプレナーを想定し,彼らが全ての情熱を仕事に注ぐための活動拠点を設計した.彼らはバイタリティに満ち溢れ,専門性の高いスキルを有するが,お金と時間に飢えている.自己実現と仕事が一致する彼らは,三度の飯より仕事を好み,プライバシーより社会への露出を切望する.彼らのライフスタイルに基づいて,住居機能を再構成すると,必然的にキッチンは専有部から共用部へと追い出され,食は他者との交流の場,即ちビジネスチャンスとして再定義される.また,共用部に対して自らのオフィスを全面的に開放し,従業員やクライアントの常時利用を前提とする.その際,居住部がやや狭かったり,トイレが自らのオフィス部分と兼用であったりすることは,全く苦にならない.それよりもむしろ,レストランやジム,コワーキングスペース,撮影スタジオ,会議室,屋上庭園など,共用部の充実を優先し,そこから得られる施設全体の収益確保,延いては賃料の軽減を望むだろう.キッチンでは,住まい手自らが調理することもあれば,レストラン開業を目指す者がマーケティングとして試食を提供することもある.共用部には居住者の4倍以上の人々が24時間出入りし,カーシェアや自転車シェアを備えた本施設は,近隣の地下鉄網と連携し,ビジター利用者の活動拠点としてもその機能を存分に発揮するに違いない.満ち満ち溢れる住まい手のエネルギーが交錯する活動拠点としての賃貸住宅をここに提案する.
Site: n/a
Status: competition
Year: 2020
Program: Residence + Office